深谷散策~消えた「ふっかちゃん」の謎
天気の良いGWの中日、深谷に遊びに出かけることにしました。
お目当ては「煮ぼうとう」、ご当地うどんの一種です。
さて、あいかわらずヘタレの私は自宅から直で現地に乗り入れようなどということは最初から考えていません。
この町には鐘撞堂山という初心者ハイキングに手ごろな山があるので、ちょくちょく訪れたことがありますが、自転車で降りるのは初めてかもしれませんね。
ここからなら深谷駅までほぼ平坦路で約12km、余裕ですね。
県道62号、通称深谷寄居線をのんびり北上。微妙に下り坂らしく、軽くこいだだけでビュンビュンスピードが乗ります。
天気もいいし、気持ちいいですねぇ。
このへんのお宅は鯉のぼりもご立派なものです。
鯉のぼりと言えば加須市のジャンボ鯉のぼりが有名ですが、今年も見事な鯉のぼりを掲げたそうです。来年あたり、観に行ってみましょうかね。
さて、小一時間たらずで深谷駅に無事到着。
当地ご自慢の、レンガ造りを模したまるで宮殿のような駅舎。
「関東の駅百選」にも選ばれているとか。
東京駅舎のレンガもここ深谷産、ということでしたが、深谷駅はタイル貼りです。
東京駅のレンガは、さらに目地の部分に「蟇股」という職人技も凝らされているのですが、さすがにそこまで再現するのはお金がかかり過ぎるんでしょうね。
駅前広場は緑も多く綺麗に整備されており、とてもよい感じ。
大きな銅像は言わずと知れた当地の偉人、青淵先生こと渋沢栄一翁です。
くるくる、のんびり回転しています。
さて、深谷駅に到着したのはちょうどお昼の12:30頃。お腹も空いてきましたので、目的地の煮ぼうとう屋さんへ急ぎましょう。
途中通りがかった深谷市役所。つい最近新築なったばかりのピカピカです。
大きなピロティを構えたモダニズムなたたずまいですが、外壁を温かみのあるレンガタイルで覆うことでとても親しみのある外観になっています。
アーチのかかったくぐり壁は、レンガ窯のイメージでしょうか。
駅からほんの10分ほどでお目当てのお食事処、「虎ひげ」に到着します。
このお店はどちらかと言うと洋食メインで、特にハンバーグや牛カツなどの肉料理が評判とのことです。人気の店とあって店内はすでに満席、さらに3組ほどが順番待ちという状態でした。
職人気質の親父さんが一皿一皿、丁寧に調理しているらしく、席に着くまで30分、オーダーしてから料理が出るまで40分とえらい待たされ、そろそろ空腹で限界だぁ…となったところでようやく料理が出されました。
深谷名物、煮ぼうとうです。
モッチモチの平打ち麺は食べ応えばっちり、たっぷり野菜の滋養に優しい醤油味のおつゆがなんだか懐かしく、ほっとする味わい。
うむ。
遠路はるばる食べに来た甲斐があったぞ~!
さて、本日の最大のミッションをクリアしましたが、ちょっとお昼に予想外の時間を取られてしまいましたので、すぐに次のポイントへ向かいます。
深谷と言えば、やはり間もなく諭吉先生に代わって一万円札の顔になる渋沢栄一の事績を訪ねないわけにはまいりません。
目的地は市北部にある「渋沢栄一記念館」なのですが、通り道にある栄一の学問の師ともいわれる尾高惇忠の生家を見学します。
ぱっと見た感じ、今でも農家にはわりと普通にありそうな古民家といったたたずまい。
奥にある書は、惇忠先生ご本人の手になるものです。
幕末の激動の中、この屋敷で洋館焼き討ちの謀議もおこなわれていたとのこと。
当時の若者たちの血潮がほとばしるような青春の現場も、今は静かにゆったり、涼しげなたたずまいを残すばかりです。
そしてチェックポイントの渋沢栄一記念館に到着。
公民館と併用の施設のようですが、さすがは「日本資本主義の父」と呼ばれる偉人の施設ですから、まるでギリシャ神殿のような重厚な構えです。
栄一は明治期の官僚・実業家ですが、経済を運営するにあたり、個人の利を追求するばかりでなく、国全体を豊かにするためにはどうすべきかを訴えた人物です。ビジネスに論語をベースにした道徳の精神を持ち込んだとされていますが、やや後年のマクロ経済学の先駆けともいえるでしょう。さらには現代のSDGsにも通じるものと言えます。
先達が英語のeconomyに「経世済民(世をおさめ、民をすくう)」の文字を当てたのはまさに慧眼でしたが、それを実業において実践したのが栄一でした。
彼の「道徳経済合一説」は、決して過去のものではなく、単なる良いお話で済まされるものでもなく、非常に普遍的かつ合理的な経済思想であるといえます。
むしろまさに今こそ、その理念が問い直されるべきでしょう。
いやあ、我が国には世界に誇るべきこんなすごい人物がいたものです。しかも我が埼玉の深谷に!
講堂には栄一先生の等身大アンドロイドが設置され、ご本人の肉声で講義も受けられるという触れ込みでしたが、この日は開催していませんでした。聴いてみたかったな。
アンドロイドは元気に稼働中で愛嬌を振りまいています。
たかが人形だろ、と思っていたら恐ろしく生々しいつくりで、目があうとドキッとします。
小柄で見るからに優しそうなおじいさんなんですね。
公民館の裏の青淵公園は、とても美しく整備された素敵な公園です。
時節柄、日の丸の横にはウクライナ国旗が。
さらに進んで、渋沢先生の生家「中の家(なかんち)」に到着します。
なんと、母屋は運悪く耐震工事中で見学不可…
ここにも渋沢先生のマネキンがお出迎えしてくれるはずだったんですがね。
工事を請け負うのは、当然ながら渋沢チルドレンの一角、清水建設です。
これはヘタな仕事はできませんぞ!
今この瞬間、世界で一番しあわせなのは間違いなくキミだ。
土蔵などを見学した後、裏手に回ると一族の追悼碑が並べられていました。
こちらは、幕末三大イケメンとも名高い尾高(渋沢)平九郎君の碑です。
さて、たっぷり深谷を満喫しましたので、そろそろ帰るとしましょうか。
来た道を深谷駅に向かってすいすいと戻ります。
深谷と言えば当然ネギなのですが、旬ではなかったようでほとんどの畑は刈り取られていました。
わずかに残ったネギが花をつけていました。
駅に戻るとちょうど17時。渋沢先生が日米友好の青い目の人形を愛でる姿が。
。。。ん?ちょっと待て。
ここは昼に来た時、「ふっかちゃん」がいたはず。
もと来たところに帰ってきたはずが、なんだかパラレルワールドに迷い込んだような眩暈を感じます。
なあんだ、二階建てだったのか。。。
意外と手の込んだからくりでした。
日が落ちる前に帰らねば、とペダルを漕ぐ足にも力が入り、なんとか明るいうちにスタート地点の寄居駅へ帰着。
天気も良くて、うどんも美味しくいろいろ勉強になって楽しいサイクリングでしたね。
■本日の走行記録
・走行距離 38.79km
・走行時間 2時間04分
・最高速度 35.7km/h
・平均速度 18.7km/h
・累積走行距離 9516.7km